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今週のサイエンスはこちらハイライト

「今週のハイライト」は、米国科学振興協会(AAAS)の広報部門が報道関係者向けに作成したニュースを日本語に翻訳したものです。サイエンス誌に掲載された論文・記事とは表現が異なる場合もあり、その正確性、通用性、完全性について、保証をするものでもありません。正確な情報を得るためには、必ず原文をご覧ください。

2009年 11月 27日

本誌は http://www.sciencemag.org/current.dtl をご覧下さい。
電子版は http://www.sciencemag.org/sciencexpress/recent.dtl をご覧下さい。

真正細菌の青写真

Blueprint for a Bacterium

最小の細菌のひとつであるマイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)において、全タンパク質の相互関連性を示す新たな報告がなされた。これにより生物に必要な最低限の細胞機構が解明される可能性がある。今回の発見から、真正細菌の生態が驚くほど複雑であり、いくつかの点で真核生物の生態に似ていることが示された。関連する3件の論文に示されているように、ヨーロッパの研究チームがマイコプラズマの生態に関する3つの要素について報告している。1つめに全タンパク質の総体(プロテオーム)、2つめに代謝ネットワーク、3つめに「トランスクリプトーム」としても知られる遺伝子から転写されたmRNAの総体である。 1つめの研究では、より複雑な生物に対し今後考えられる可能性について、Sebastian Kuhnerらがタンパク質の相互作用の解析とタンパク質構造に関する情報を組み合わせて、タンパク質が分子機械としてどのように相互に働いているのかを解明した。また、いくつかのタンパク質複合体について、その細胞内での位置も明らかにされた。2つめの研究では、Eva Yusらがこの生物の代謝ネットワークを再構築した。サイズが小さく扱いやすいゲノムがそれらの実験的な確認も可能にしている。またYusらはこの細菌を培養できる最少培地を開発した。3つめの研究では、Marc Guellらが最新の配列解析法を用いて、この「単純な」生物が比較的複雑な遺伝子発現調節システムを有し、それが真核生物のものと似ていることを突き止めた。PerspectiveではHoward OchmanとRahul Raghavanが3つの研究について考察している。

"Proteome Organization in a Genome-Reduced Bacterium," by S. Kuehner; V. van Noort; M.J. Betts; A. Leo-Macias; C. Batisse; M. Rode; T. Yamada; S. Bader; P. Beltran-Alvarez; D. Castano-Diez; W.-H. Chen; D. Devos; I. Racke; V. Rybin; B. Bottcher; A.S. Frangakis; R.B. Russell; P. Bork; A.-C. Gavin at European Molecular Biology Laboratory in Heidelberg, Germany; T. Maier; M. Guell; E. Yus; L. Serrano at Centre de Regulacio Genomica in Barcelona, Spain; T. Norambuena at Pontificia Universidad Catolica de Chile in Santiago, Chile; A. Schmidt; R. Aebersold at ETH (Eidgenossische Technische Hochschule) Zurich in Zurich, Switzerland; A. Schmidt; R. Aebersold at University of Zurich in Zurich, Switzerland; A. Schmidt; R. Aebersold at Institute for Systems Biology in Seattle, WA; R. Herrmann at ZMBH (Zentrum fur Molekulare Biologie der Universitat Heidelberg) in Heidelberg, Germany; L. Serrano at ICREA (Institucio Catalana de Recerca i Estudis Avancats) in Barcelona, Spain; B. Bottcher presently at University of Edinburgh in Edinburgh, UK.

ヒトの体を侵す病原菌の侵入口

Our Bodies’ Portals for Pathogens

ヒトは、裸眼では見えない様々な種類の病原菌により身体を壊し(さらには死亡し)ている。それをさせているものは何だろうか。この問いに答えを出すため、かつ新たな治療法を発見するために、新しいスクリーニング法が開発された。これによって、サルモネラ菌、大腸菌、インフルエンザウイルスなど危険なヒト病原菌が我々の体内に入って大きな被害をもたらす際に必要な特定のヒト遺伝子やタンパク質を見つけることができる。このスクリーニング法では、各細胞からのヒト染色体のコピー1個のみを利用する。半数体酵母で行われる標準的な遺伝子スクリーニングに良く似ている。スクリーニング結果を利用すれば、将来、抗ウイルス薬や細菌感染症治療法の開発をスピードアップすることが可能になるだろう。Jan Caretteらは、この遺伝子スクリーニング法をデザインし、それを用いてサルモネラ菌や大腸菌の細胞致死性膨張性毒素がヒトを攻撃する際に狙う特定のヒト遺伝子を同定した。また、その毒素と結合し相互作用する特定のタンパク質受容体も発見した。さらに、このスクリーニング法を用いて、インフルエンザウイルスおよびジフテリア毒素がヒトの身体を侵略する時にどのようなヒト遺伝子・タンパク質を必要としているのかを調査した。著者らは、この哺乳類細胞を対象とした新規スクリーニング法について、様々な生体内過程に対し幅広く応用可能であり、また数々の病原体が必要とするホスト側の要因のリスト作成にも使用できる、と述べている。逆にこのリストから、関連する感染症と戦うための新戦略を見つけることも可能であろう。

"Haploid Genetic Screens in Human Cells Identify Host Factors Used by Pathogens," by J.E. Carette; C.P. Guimaraes; M. Varadarajan; A.S. Park; I. Weuthrich; A. Godarova; E. Spooner; H.L. Ploegh; T.R. Brummelkamp at Whitehead Institute for Biomedical Research in Cambridge, MA; M. Kotecki; B.H. Cochran at Tufts University School of Medicine in Boston, MA; H.L. Ploegh at Massachusetts Institute of Technology in Cambridge, MA.

同所的種分化の仕組み

How Species Can Diverge on Shared Turf

個体群を地理的に分断する境界が存在しない場合、新しい種はどのように誕生するのか。この進化生物学における長年の謎が解明された。種分化のシナリオとして一般的なのはガラパゴス諸島でのダーウィンフィンチ類と同様の経緯、つまり、ある個体群が複数の孤立した個体群に分かれ、その後長い時間を経て各個体群で遺伝的不適合性が生じ、個体間は子孫を残しても、個体群間の子孫は繁殖できなくなるというシナリオである。しかし、種分化は遺伝子流動を妨げる物理的障壁がない地域でも起こる。G. Sander van Doornらは今回の理論的研究において、メスが地域環境への適合性の高さを示すオスを選好するという性淘汰によっても種分化は促進されると述べている。このモデルでは性淘汰は「分断性選択」という状況で起きる。これは中間的ではない極端な特徴を受け継いだ個体に有利な選択で、たとえば、黒色と白色に囲まれた環境下でカムフラージュが必要な場合、生存率が高いのは体の色がグレーの動物ではなく、黒ないしは白の動物の方である。こういった種類の状況では、メスが周辺環境への適合性が高いことを示す身体特徴を持つオスを選好すれば、結果として環境に不適合な地域独自の特徴に欠けた子孫が生まれる機会が減る。以上のことから、対立し合うと考えられがちな自然淘汰と性淘汰が、実は互いに補強し合あって種分化を引き起こしていると言える。

"On the Origin of Species by Natural and Sexual Selection," by G.S. van Doorn; P. Edelaar; F.J. Weissing at Santa Fe Institute in Santa Fe, NM; G.S. van Doorn at University of Bern in Hinterkappelen, Switzerland; P. Edelaar; F.J. Weissing at University of Groningen in Haren, The Netherlands; P. Edelaar at Uppsala University in Uppsala, Sweden; P. Edelaar at Estacion Biologica de Donana CSIC in Sevilla, Spain.

過去1,000年間の気候異常

Climate Anomalies of the Last Millennium

過去1,000年間において気候が極めて特異であった2つの時期は−科学者らはこれらを詳しく研究することで、今後1,000年間の気候変動を予測するヒントをつかもうとしている−エルニーニョ現象のような大規模な物理過程の変動の結果であったと考えられる。そしてこれらの物理過程はまた、地球に届く日射量の変化に対する反応であったと研究者らは報告している。過去1,500年の世界の気候記録によると、明らかに人的な要因による20世紀の温暖化より以前に、2回にわたって異常気温が長く続いている。950〜1250年頃の温暖期である中世の気象異常と1400〜1700年頃の寒冷期である小氷河時代であるが、これらの事象を引き起こしたメカニズムはほとんど解明されていない。Michael Mannらは紀元500年以降の年輪、氷床コア、サンゴ、堆積物から得た気候の代替データを解析し、代替データに基づく地球上の地表温度のパターンと気候モデルから再現したパターンを比較した。その結果、エルニーニョや北大西洋振動といった大規模な物理過程は地球に届く日射量の変化に影響され、確認されたパターンの大半の原因となったことが判明した。Mannらが代替データで確認した変化には主な気候モデルのシミュレーションでは再現されなかったものもあることから、そういったモデルの気候変動シミュレーション能力の改善に向けて研究を重ねる必要があると思われる。

"Global Signatures and Dynamical Origins of the Little Ice Age and Medieval Climate Anomaly," by M.E. Mann; Z. Zhang at Pennsylvania State University in University Park, PA; S. Rutherford at Roger Williams University in Bristol, RI; R.S. Bradley at University of Massachusetts in Amherst, MA; M.K. Hughes; F. Ni at University of Arizona in Tucson, AZ; D. Shindell; G. Faluvegi at NASA Goddard Institute for Space Studies in New York, NY; C. Ammann at National Center for Atmospheric Research in Boulder, CO.

Translational Medicine 11月25日号:稀な胃疾患に対する新規治療薬

Novel Treatment for Rare Stomach Disease

稀な胃疾患であるメネトリエ病がフランス人病理学者Pierre Menetrierにより最初に記録されてから100年が経つが、今回の新たな試験によって初の有効な治療法が示唆された。ほとんどのメネトリエ病成人患者では、胃壁の内側に沿った隆起(「襞」と呼ばれる)が生じ、肥大して、胃粘膜内に「巨大皺襞」が形成される。またこの疾患では酸を分泌する胃腺が萎縮し、タンパク質が胃粘膜から漏出する。患者は通常、腹痛、嘔吐、足と足首の腫脹を経験し、胃癌のリスクが増大する。 メネトリエ病の病因は明らかでないが、遺伝的要素は含まない後天性疾患であろうと考えられている。最近の研究から、メネトリエ病患者の胃はTGF-αと呼ばれるタンパク質を異常に多量に産生していることが示唆されている。この疾患の有効薬は未だに得られておらず、患者にとって最後の防衛線は胃の全摘または部分摘出であった。そして今回、Robert Coffey、Haley Fiskeと共同研究者らは、重度メネトリエ患者9例に抗がん剤セツキシマブ(胃の一定の受容体にTGF-αが結合することを阻害する)を投与した研究を報告した。1ヵ月の治療を完了した7例では、その全員が症状と生化学的特性の有意な改善を示した(胃のTGF-α産生の低下、胃の襞の減少など)。さらに劇的なことは、その参加者の4例で、胃の過剰な襞がほぼ完全に消失したことである。セツキシマブは既に結腸直腸癌患者の治療にFDAより承認されているが、メネトリエ病治療薬としても承認を得られるよう、現在取り組みが続けられている。

"Efficacy of Cetuximab in the Treatment of Menetrier’s Disease," by W.H. Fiske; J. Tanksley; K.T.Nam; J.R. Goldenring; D.C Liebler; A.M. Abtahi; B. La Fleur; G.D. Ayers; C.D. Lind; M.K. Washington; R.J. Coffey at Vanderbilt University School of Medicinein Nashville, TN; R.J.C. Slebos at Department of Veterans Affairs Medical Center in Nashville, TN.
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