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今週のサイエンスはこちらハイライト

「今週のハイライト」は、米国科学振興協会(AAAS)の広報部門が報道関係者向けに作成したニュースを日本語に翻訳したものです。サイエンス誌に掲載された論文・記事とは表現が異なる場合もあり、その正確性、通用性、完全性について、保証をするものでもありません。正確な情報を得るためには、必ず原文をご覧ください。

2009年 10月 16日

本誌は http://www.sciencemag.org/current.dtl をご覧下さい。
電子版は http://www.sciencemag.org/sciencexpress/recent.dtl をご覧下さい。

心筋組織を組み立てる

Assembling Heart Muscle Tissue

損傷した心臓組織の再生に向けてまた新たな一歩が踏み出された。米国の研究者らは、心室の筋肉を作るための前駆細胞集団を特定することに成功した。ほ乳類の心臓は様々な筋細胞および非筋細胞から構成されているが、これらの細胞は異なる2種類の前駆細胞群から発生する。これらの前駆細胞と心室の発達過程を正確に理解することは、心臓の発達過程の解明や心血管再生医療にとって極めて重要である。例えば、細胞をうまく誘導して、障害のある心臓で機能するはずの正常な心筋をつくることはこれまで失敗に終わっていた。Ibrahim Domianらは、発生時のマウス胚で心臓細胞群に赤色と緑色の蛍光タグを付してラベリングするという方法を用いた。これにより、心室の筋肉に特異的に分化する前駆細胞を分離することに成功し、こうして作られた筋肉から、正常に「拍動する」心室の筋組織を作ることができた。このように組織工学と幹細胞生物学を組み合わせることによって、患者や疾患に特異的な心臓前駆細胞を分離することが可能になるだろう、とIbrahim Domianらは述べている。

"Generation of Functional Ventricular Heart Muscle from Mouse Ventricular Progenitor Cells," by I.J. Domian; M. Chiravuri; P. van der Meer; X. Shi; Y. Shao; S.M. Wu; K.R. Chien at Massachusetts General Hospital in Boston, MA; I.J. Domian; S.M. Wu; K.K. Parker; K.R. Chien at Harvard Stem Cell Institute in Cambridge, MA; P. van der Meer at University Medical Center Groningen in Groningen, Netherlands; A.W. Feinberg; K.K. Parker; K.R. Chien at Harvard University in Cambridge, MA; K.K. Parker at Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering, Harvard University in Boston, MA.

プラセボ効果に脊髄が関与

Spinal Cord Implicated in the Placebo Effect

「効果のある疼痛治療を受けている」と思っていると、脊髄内の後角と言われる領域で疼痛シグナル伝達が低下する―このような効果があることが、ドイツの研究者らによって明らかにされた。今号のBreviumではFalk Eippertらが、健常被験者に麻酔クリームの検査と思わせておいて、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて脊髄における活動の変化を観察した結果を紹介している。Eippertらは、被験者の前腕に疼痛を引き起こす熱刺激を与えた後、被験者がリドカインクリームの治療を受けていると思っている場合と、効果のない「対照」クリームによる治療を受けていると思っている場合とで、脊髄の反応を比較した(実際は両方とも同じクリームであり、薬理学的効果はない)。その結果、リドカインクリームの治療を受けていると思っている被験者では、脊髄後角の神経活動が低下することがわかった。この結果は、このようなプラセボ効果には、脳から脊髄に至る下行性の疼痛抑制系の活性化が一因として関与しているという仮説を直接裏付けるものである。

"Direct Evidence for Spinal Cord Involvement in Placebo Analgesia," by F. Eippert; J. Finsterbusch; U. Bingel; C. Buchel at University Medical Center Hamburg-Eppendorf in Hamburg, Germany.

炭酸の味を感じる舌のしくみ

How the Tongue Tastes a Fizzy Drink

米国の研究者らの報告によると、酸味を感じる舌の細胞は炭酸の味を感知するセンサーでもある。炭酸飲料を飲んだ時の発泡感は、物理的な感覚と二酸化炭素の味の両方によるが、その詳細な分子機構は今まで解明されていなかった。Jayaram Chandrashekarらは、マウスの舌で特定の味覚細胞群を遺伝子操作によって不活化し、酸味を感じる細胞が欠損したマウスは炭酸の味も感じないことを発見した。酸味センサーである味覚細胞に特異的に発現する遺伝子をスクリーニングした結果、炭酸脱水酵素IVをコードする遺伝子が明らかになった。この酵素は、二酸化炭素と水を炭酸水素イオンと水素イオンに変換する反応を触媒しており、結果として発生する水素イオンが酸味を感じる細胞に作用すると考えられる。この遺伝子を欠損させたマウスでは炭酸の味を感じる能力も低下していた。Chandrashekarらは、炭酸の味を感じる細胞は発酵食品の味を感じるセンサーとして進化してきた可能性があると推測している。

"The Taste of Carbonation," by J. Chandrashekar; D. Yarmolinsky; Y. Oka; C.S. Zuker at Howard Hughes Medical Institute in La Jolla, CA; J. Chandrashekar; D. Yarmolinsky; Y. Oka; C.S. Zuker at University of California, San Diego in La Jolla, CA; L. von Buchholtz; N.J.P. Ryba at National Institute of Dental and Craniofacial Research in Bethesda, MD; W. Sly at Saint Louis University School of Medicine in St. Louis, MO.

太陽圏のイメージを刷新する

Re-Imagining the Heliosphere

星間境界探査機(IBEX)とカッシーニ探査機は、宇宙の真空環境にトラップされたガスや塵などの局所的な星間物質と太陽との相互作用を何カ月にもわたり監視してきた。今やこれらの探査機から得られたデータから、太陽圏(ヘリオスフィア)として知られている太陽系内で、太陽風がどのように放射性の空洞を作り出しているのかについて、まったく予想もされなかった姿が明らかになってきた。  IBEX探査機は、太陽圏の周辺領域の高エネルギー中性原子(ENA)を画像化することで、この領域の放射能全天図を初めて作成した。この全天図を利用して、D.J. McComasらはいままでのモデルや理論で予測されていなかった、このENA放射がつくる明るい「リボン」を報告した。この予期せぬ発見は、太陽圏内には周囲の銀河環境の跡が残りやすいことを示しており、著者らは、ENAの「リボン」は、局所的な星間磁場と太陽圏の相互作用により生じた可能性があると述べている。Stephen Fuselierらはこの「リボン」を調査し、その形状が細く長いことを報告している。また、そのエネルギーは0.2から6.0keVの範囲にあることを観測し、そのフラックスはENAの活動領域の2倍から3倍の大きさで、太陽圏の他の領域に及んでいると述べている。Herbert Funstenらは、太陽圏外のスペクトルを解析し、ヘリオシース(太陽圏内の「コンマ(,)」形をした領域で、太陽風が減速し星間物質と混ざり合う場所)を支えている構造と力学について驚くべき光をあてた。IBEXによる観測結果と太陽圏に関する従来のモデルを比較したNathan Schwadronらは、既存のモデルではこの「リボン」の主要な特徴をすべて説明することはできないことを明らかにした。そのうえで彼らは、これらの新しい発見により、太陽圏とその形成プロセスについての我々の理解が変わるであろうと述べている。  Eberhard MobiusらはIBEXデータを用いて、太陽圏を取り巻く星間領域の水素ガスおよび酸素ガスの流れの特徴を初めて明らかにした。この結果は、これらのガスがどこで発生したのかを解く鍵になる。Stamatios Krimigisらは、カッシーニ探査機により、土星由来の星間物質と太陽圏の相互作用を示す画像を得た。彼らは、搭載されたイオンカメラと中性子カメラを用いて同様に太陽圏の全天図を作成し、やはり既存のいかなるモデルにも合致しない同様の結果を得た。これらすべてのデータから示唆されるのは、太陽圏はこれまで研究者らが想像していたような、彗星と同様の空洞領域ではないということである。

"Global Observations of the Interstellar Interaction from the Interstellar Boundary Explorer (IBEX)," by D.J. McComas; F. Allegrini; G. Livadiotis; S. Livi; P.W. Valek at Southwest Research Institute in San Antonio, TX; D.J. McComas; F. Allegrini; S. Livi; P.W. Valek at University of Texas at San Antonio in San Antonio, TX; P. Bochsler; L. Saul; P. Wurz at University of Bern in Bern, Switzerland; M. Bzowski at Polish Academy of Sciences in Warsaw, Poland; E.R. Christian; R.J. MacDowall; T. Moore at NASA Goddard Space Flight Center in Greenbelt, MD; G.B. Crew; R. Vanderspek at Massachusetts Institute of Technology in Cambridge, MA; R. DeMajistre; S. Krimigis; D. Mitchell; E. Roelof at Applied Physics Laboratory, Johns Hopkins University in Laurel, MD; H. Fahr at University of Bonn in Bonn, Germany; H. Fichtner at Ruhr-Universitaet Bochum in Bochum, Germany; P.C. Frisch at University of Chicago in Chicago, IL; H.O. Funsten at Los Alamos National Laboratory in Los Alamos, NM; S.A. Fuselier at Lockheed Martin Advanced Technology Center in Palo Alto, CA; G. Gloeckler at University of Michigan in Ann Arbor, MI; M. Gruntman at University of Southern California in Los Angeles, CA; J. Heerikhuisen; N.V. Pogorelov; G.P. Zank at University of Alabama in Hunstville, AL; V. Izmodenov at Moscow State University in Moscow, Russia; V. Izmodenov at Russian Academy of Sciences in Moscow, Russia; P. Janzen; D. Reisenfeld at University of Montana in Missoula, MT; P. Knappenberger at Adler Planetarium in Chicago, IL; S. Krimigis at Academy of Athens in Athens, Greece; H. Kucharek; M. Lee; E. Moebius at University of New Hampshire in Durham, NH; N.A. Schwadron at Boston University in Boston, MA.

Translational Medicine 10月14日号: サルのパーキンソン病に対する遺伝子治療

Monkeys with Parkinson’s Treated Using Gene Therapy

マカクザルで検証された遺伝子治療法が、パーキンソン病の治療と痙攣様運動(パーキンソン病の長期治療に随伴する不随意運動)の予防に有望であるとフランスの研究チームが報告している。パーキンソン病では、化学物質であるドーパミンが減少するために、身体運動が制御不能となる。標準治療としては、脳内のドーパミン量を一時的に増加させる経口薬を患者に投与する。しかし、この治療では正常機能に必要なドーパミン量を安定して維持することができないため、ジスキネジアと呼ばれる運動障害をきたす。今回の新たな結果から、遺伝子治療を用いて脳内のドーパミンを回復させることで、ジスキネジアを併発せずにパーキンソン病を治療できる可能性が示唆された。 Bechir Jarrayaらは進行期パーキンソン病をシミュレートするため、パーキンソン病を選択的に引き起こす神経毒を、重度のパーキンソン症候群に特徴的な身体の振戦、硬直、および姿勢不安定が認められるまでサルに投与した。こうして誘発させたパーキンソン病を治療するため、ドーパミン産生に不可欠な3つの遺伝子をサルの脳に導入した。Jarrayaらは脳内のドーパミンを測定できる生物学的プローブをサルに埋め込み、最長で3年半観察した。その結果、この遺伝子治療法により、脳内のドーパミン濃度が安全に回復し、運動障害が改善され、ジスキネジアが予防された。重度の有害な副作用は生じなかった。著者らは、今回と同じドーパミン遺伝子治療法による、ヒトでの第1/2相試験が現在進行中であると報告している。

"Dopamine Gene Therapy for Parkinson’s Disease in a Nonhuman Primate Without Associated Dyskinesia," by B. Jarraya; S. Boulet; C. Jan; G. Bonvento; M. Shin; T. Delzescaux; A.-S. Herard; E. Brouillet; P. Hantraye; S. PalfiatMolecular Imaging Research Center (MIRCen) in Fontenay-aux-Roses, France; B. Jarraya; S. Boulet; C. Jan; G. Bonvento; M. Shin; T. Delzescaux; A.-S. H?rard; E. Brouillet; P. Hantraye; S. Palfiat CNRS in Fontenay-aux-Roses, France; B. Jarraya; X. Drouot; S. PalfiatUniversite Paris 12inCreteil, France; B. Jarraya; S. Palfiat AP-HP, Groupe Henri-Mondor Albert-Chenevier, UF Neurochirurgie Fonctionnelle in Creteil, France; G.S. Ralph; J.E. Miskin; D.M. Day; S.M. Kingsman; K.A. Mitrophanousat Oxford BioMedica Ltd.in Oxford, UK; M. AzzouzatSheffield University in Sheffield, UK; X. Drouotat AP-HP, Groupe Henri-Mondor Albert-Chenevier, Service de Neurophysiologiein Creteil, France; N.D. Mazarakisat Imperial College London in St Mary’s Campus, London.
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