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今週のサイエンスはこちらハイライト

「今週のハイライト」は、米国科学振興協会(AAAS)の広報部門が報道関係者向けに作成したニュースを日本語に翻訳したものです。サイエンス誌に掲載された論文・記事とは表現が異なる場合もあり、その正確性、通用性、完全性について、保証をするものでもありません。正確な情報を得るためには、必ず原文をご覧ください。

2009年 10月 9日

本誌は http://www.sciencemag.org/current.dtl をご覧下さい。
電子版は http://www.sciencemag.org/sciencexpress/recent.dtl をご覧下さい。

慢性疲労につながるレトロウイルス

Retrovirus Linked to Chronic Fatigue

最近実施された試験の対象者である慢性疲労症候群(CFS)患者のうち、2/3が血液細胞に感染性レトロウイルスを保有していることがわかった。しかし、そのレトロウイルスがCFSの原因となるかどうかは不明である。CFSでは多臓器と身体の自己免疫系が障害されるが、その原因は明らかではない。Vincent Lombardiらは、マウスの白血病ウイルスに遺伝子的に似たヒトレトロウイルスXMRVを、CFS患者101例中68例の血液試料に認めた。それに対し、健常被験者は218例中わずか8例にXMRVがみられた。LombardiらはXMRVが感染性であり免疫応答を引き起こすことを示している。ヒト前立腺腫瘍の一部にも最近認められたこのXMRVは、かなりの割合のCFS患者が保有していると考えられる。John CoffinおよびJonathan Stoyeが関連するPerspectiveのなかで考察しているように、保有率に関わらずXMRVがCFSを生じさせる可能性は依然として不明である。

"Detection of an Infectious Retrovirus, XMRV, in Blood Cells of Patients with Chronic Fatigue Syndrome," by V.C Lombardi; M.A. Pfost; K.S Hagen; D.L. Peterson; J.A. Mikovits at Whittemore Peterson Institute in Reno, NV; F.W. Ruscetti; S.K. Ruscetti; R.K. Bagni; C. Petrow-Sadowski; B. Gold; M. Dean at National Cancer Institute in Frederick, MD; J.Das Gupta; R.H. Silverman at The Cleveland Clinic Foundation in Cleveland, OH.

パラスは原始惑星

Protoplanet 2 Pallas

大型の小惑星である小惑星番号2番のパラス、1番のケレス、4番のベスタの研究において、パラスは原始惑星にまで成長した後に、その状態を留めた原始惑星そのものといえる天体であることがハッブル宇宙望遠鏡の撮影した画像から判明した。直径265キロメートルのパラスは小惑星帯の中では最大規模の天体の1つである。B.E. Schmidtらはハッブル宇宙望遠鏡がとらえた画像を用いてパラスの表面と形状の特徴を調べた。その結果、熱進化および衝突による破片であるパラスと同じ軌道性質を持つ「パラス族」の形成に関連すると思われる天体表面の色の違いと地形を確認した。特に、巨大な衝突クレーターはパラス族形成の元になった可能性がある。パラスは水分を多く含む物質で構成され、内部変化が起きたケレス・ベスタに次いで、小惑星帯で誕生時の姿を留める原始惑星の1つであるとSchmidtらは述べている。

"The Shape and Surface Variation of 2 Pallas from the Hubble Space Telescope," by B.E. Schmidt; C.T. Russell at University of California, Los Angeles in Los Angeles, CA; P.C. Thomas at Cornell University in Ithaca, NY; J.M. Bauer at NASA Jet Propulsion Laboratory in Pasadena, CA; J.-Y. Li; L.A. McFadden at University of Maryland in College Park, MD; M.J. Mutchler at Space Telescope Science Institute in Baltimore, MD; S.C. Radcliffe at Hydraulx in Santa Monica, CA; A.S. Rivkin at Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory in Laurel, MD; J.W. Parker; S.A. Stern at Southwest Research Institute in San Antonio, TX.

「王室病」は血友病Bと判明

“Royal Disease” Was Hemophilia B

19世紀〜20世紀初頭にかけて、大英帝国のヴィクトリア女王の子孫達を苦しめたいわゆる「呪われた血」はおそらく血液凝固障害である血友病Bの重度のものであったことがEvgeny I. RogaevらがBreviumに発表した新たな研究により明らかになった。歴史学者らはこれまで、ヴィクトリア女王からドイツ、スペイン、ロシアの王族に遺伝していったいわゆる王室病の追跡調査を行ってきた。この血液疾患はX染色体が関与しているため母系遺伝性疾患であるが、病気が発現するのはほとんどの場合男性の子孫である。この疾患の性質を正確に解明するため、彼らはヴィクトリア女王のひ孫で血友病患者であったアレクセイ皇太子を含むロシアのロマノフ家の近年確認された白骨化遺体から分解DNAサンプルを抽出した。この歴史的に有名なDNAを調べたところ、血液凝固因子IXをコードする遺伝子のX染色体に突然変異が認められ、血友病Bの重症型と一致することが明らかになった。

"Genotype Analysis Identifies the Cause of the 'Royal Disease'," by E.I. Rogaev; A. P. Grigorenko; G. Faskhutdinova; E.L.W. Kittler; Y.K. Moliaka at University of Massachusetts Medical School in Worcester, MA; E.I. Rogaev; A.P. Grigorenko at Vavilov Institute of General Genetics RAS in Moscow, Russia; E.I. Rogaev; A.P. Grigorenko at Research Center of Mental Health RAMS in Moscow, Russia; E.I. Rogaev at Lomonosov Moscow State University in Moscow, Russia.

独自の進化を遂げた哺乳類の祖先

The Unique Evolution of a Mammalian Ancestor

ヒトなどの有胎盤哺乳類やカンガルーなどの有袋類哺乳類の先史時代の祖先の化石を分析した結果、それらの特徴的な中耳はその進化時期に消え、再び生じるという進化を繰り返してきたことが判明した。その最終段階での形の特徴としては、下顎骨と分離していること、および、胚形成期にメッケル軟骨が消失することが挙げられる。哺乳類の中耳が幾度もの進化を経てきたという今回の研究結果は、長い進化過程では原始的な種から派生的な種へと直線的に進むだけでなく、より原始的な特徴や状態への逆戻りも起こり得ることを示している。Qiang Jiらはこのような結論に達するにあたり、中国河南にある地質学博物館(Henan Geological Museum)が所蔵する白亜紀初期の哺乳類Maotheriumの化石を分析した。後に有胎盤哺乳類と有袋類哺乳類となる系統に属するその化石の中耳は、その祖先では下顎骨と分離しているが、再び融合している。中耳と顎骨の分離にはその発達過程における同義遺伝子と情報伝達系の関与が発達的研究によって明らかにされていることから、母胎内での遺伝子によるパターン化と遺伝子の変化が、この独特な中耳の初期進化および多数の進化を引き起こした可能性があるとQiang Jiらは述べている。関係するPerspectiveではThomas MartinとIrina Rufがこれらの研究結果を詳しく説明している。

"Evolutionary Development of the Middle Ear in Mesozoic Therian Mammals," by Q. Ji; C.-X. Yuan at Chinese Academy of Geological Sciences in Beijing, China; Z.-X. Luo at Carnegie Museum of Natural History in Pittsburgh, PA; X. Zhang; L. Xu at Henan Geological Museum in Zhengzhou, China.
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