Google
science内 検索 webサイト検索
JAPAN HOME > ハイライト

今週のサイエンスはこちらハイライト

「今週のハイライト」は、米国科学振興協会(AAAS)の広報部門が報道関係者向けに作成したニュースを日本語に翻訳したものです。サイエンス誌に掲載された論文・記事とは表現が異なる場合もあり、その正確性、通用性、完全性について、保証をするものでもありません。正確な情報を得るためには、必ず原文をご覧ください。

2009年 8月 21日

本誌は http://www.sciencemag.org/current.dtl をご覧下さい。
電子版は http://www.sciencemag.org/sciencexpress/recent.dtl をご覧下さい。

インフルエンザの蔓延を阻止する最良の方法

The Best Way to Halt the Flu

インフルエンザワクチン接種で最優先されるべき年齢層は、幼児や高齢者ではなく、学童期の子どもとその親であることが新たに行われた研究から明らかになった。Jan MedlockとAlison Galvaniは年齢を考慮に入れたインフルエンザ感染の数学モデルを開発し、ウイルスの拡散を最小限にとどめるにはどの年齢層にワクチンを分配するのが最良の方法であるかを分析した。Medlockらによると、年齢別の感染パターンはワクチン配布方針を決める際に考慮すべきであるが、米国疾病管理予防センター(CDC)の勧告では現在このことを特に考慮していない。Medlockらのモデルは調査や歴史的インフルエンザ大流行から得た死亡データを利用し、死亡、感染、生命損失年数の合計、機会費用など多くの要因を考慮して最も効果的なワクチン接種戦略を求めた。Medlockらが今日みられるインフルエンザ発生の理論と1918年および1957年に起った過去のインフルエンザ大流行とを比較したところ、インフルエンザに最も感染しやすい児童(5〜19歳)と子どもから最も感染しやすいその親(30〜39歳)を最優先にワクチン接種の対象者と指定すれば、わずか約6300万回分のワクチンを最適分配することによってインフルエンザの大流行を阻止することができるとの結論に達した。このようにターゲットを絞ったワクチン接種戦略を実施することで、残りの人々も感染から守ることができるだろうとMedlockらは述べている。さらにこのモデルが予測する6300万回分のワクチンは、現在季節性インフルエンザに備えて毎年投与されている8500万回分という投与量を下回る。これらの結果は、ワクチンの年齢別の感染パターンを考慮することの重要性を示すものであり、著者らはCDCの現在の勧告がンフルエンザ流行の実際の影響を最低限にとどめるものになるよう改訂されるべきであると提案している。

"Optimizing Influenza Vaccine Distribution," by J. Medlock; A.P. Galvani at Yale University School of Medicine in New Haven, CT; J. Medlock at Clemson University in Clemson, SC.

合成ゲノムに向けて一歩前進

Stop Toward Synthetic Genomes

あるバクテリアのゲノムをイースト菌に移して組み替えを行い、それをもうひとつ別のバクテリアに移植させることに成功した。この研究により、バイオ燃料の製造、有害廃棄物の除去、炭素の隔離といった用途に利用できる新種の微生物をつくり出すという最終目標に向けてひとつの障害を乗り越えることができた。Carole LartigueらはこれまでMycoplasma mycoidesというバクテリアのゲノムを別のバクテリアMycoplasma capricolumへ移植する方法を既に解明していた。Lartigueらはまた、このゲノムをイースト菌に移植すると、新しい方法でゲノムを組み替えることが可能になることを明らかにしていた。しかし組み替えたゲノムを新しいバクテリアに移植する際、外科医が臓器移植で直面するのと同じ問題、つまりホストに新しい物質を受け入れさせるにはどうすればいいかという問題に直面した。バクテリアの多くはいわゆる「制限修飾システム」によって外来DNAから自らを守っている。これらバクテリアの中には「制限酵素」があり、これが短鎖DNAを狙って破壊する。バクテリアは自分自身のDNAをこれら酵素から守るため、自分のゲノムに沿った重要ポイントにメチル群と呼ばれる化合物を付けて行く。ところが、イースト菌はこのように自分のゲノムをメチル化することはない。Lartigue らはM. mycoidesゲノムをイースト菌へ移植し非必須遺伝子を削除(これはバクテリア自身の中で行われることはない)した後、対象となるホストのバクテリア、M. capricolumによる制限修飾を回避するため2つのステップを採った。まずM. capricolumの制限酵素を不活性化し、メチル群をまだイースト菌の中に存在する組み替えゲノムへ加えた。その後そのゲノムをM. capricolumに移植し、細胞分裂を数段階経た後、M. capricolumはドナーとなった微生物M. mycoidesの新種をつくり出すことに成功した。

"Creating Bacterial Strains from Genomes that Have Been Cloned and Engineered in Yeast," by C. Lartigue; S. Vashee; M.A. Algire; R.-Y. Chuang; L. Ma; V.N. Noskov; E.A. Denisova; D.G. Gibson; N. Assad-Garcia; N. Alperovich; D.W. Thomas; C. Merryman; J.C. Venter; J.I. Glass at The J. Craig Venter Institute in Rockville, MD; G.A. Benders; C.A. Hutchison III; H.O. Smith; J.C. Venter at The J. Craig Venter Institute in San Diego, CA; D.W. Thomas at Biotechnology Industry Organization (BIO) in Washington, DC.

爆弾で敵を追い払え!深海生物の自己防衛

Bombs Away! A Deep Sea Worm’s Defense

小さな風船のような物体を発する深海に生息する新種の環形動物が複数発見された。風船状のその物体は深海生物から発せられると同時に鮮やかな緑色に輝き出す。Brevium記事のKaren Osbornらの報告によると、この輝く「爆弾」は、敵の目をくらますためにイカが吐き出す墨と同じく、深海生物が捕食生物から逃げる間、捕食生物の注意をそらす役割を果たしているようである。Osbornらはフィリピン沖および米国からメキシコの西海岸で無人潜水艇を用いて深海潜水調査を行い、7種の新種の深海生物を発見した。そのうち5種がこの珍しい「爆弾」を発していた。4種は海底近く、3種は水柱(water column)の上層部に生息している。どの種も扇状の長い剛毛で櫂の形をつくり、巧みに泳ぐ。この研究結果は深海生物に関する現在のわれわれの知識がいかに限られたものであるかを示唆する貴重なものであるとOsbornらは述べている。

"Deep-Sea, Swimming Worms with Luminescent “Bombs”," by K.J. Osborn; G.W. Rouse at Scripps Institution of Oceanography in La Jolla, CA; S.H.D. Haddock at Monterey Bay Aquarium Research Institute (MBARI) in Moss Landing, CA; F. Pleijel at University of G?teborg in Str?mstad, Sweden; L.P. Madin at Woods Hole Oceanographic Institution (WHOI) in Woods Hole, MA.

いもち病に抵抗性を示すイネ

Blast-Resistant Rice

イネという世界的に重要な農作物に壊滅的な打撃を与え得る糸状菌病害、いもち病を撃退できる品種のイネがある。新しい研究により、この優れた能力を備えた品種が1世紀を超える栽培期間、どのように病原菌に抵抗してきたのかが説明された。この発見により世界中のイネのいもち病抵抗性を育種家が強化できるようになるであろう。福岡修一らは抵抗性遺伝子を有するDNAクローンを作成し、遺伝子Pi21を同定した。福岡らはいもち病罹病性遺伝子と抵抗性遺伝子の違いに関与する変異を解明し、育種実験で抵抗性遺伝子pi21を持つとコメの品質が低下するという密接な関連をも断つことに成功した。この密接な関連は、今まで育種家が農業に有用な抵抗性品種を育成するうえで制限となっていたことから、今回の研究結果は貴重な進歩である。

"Loss of Function of a Proline-Containing Protein Confers Durable Disease Resistance in Rice," by S. Fukuoka; K. Ono; K. Ebana; N. Hayashi; A. Takahashi; H. Hirochika; M. Yano at National Institute of Agrobiological Sciences in Tsukuba, Japan; N. Saka at Aichi Agricultural Research Center in Toyota, Japan; H. Koga at Ishikawa Prefectural University in Nonoichi-machi, Japan; T. Shimizu at Institute of the Society for Techno-Innovation of Agriculture, Forestry and Fisheries in Tsukuba, Japan; K. Okuno at University of Tsukuba in Tsukuba, Japan.
  • Science メールマガジン登録
  • Science 定期購読のご案内
  • Science デジタル版のご案内
  • 法人のお客様へ

  • Breakthrough of the Year
  • Breakthrough of the Year 日本語版

このページのトップへ