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今週のサイエンスはこちらハイライト

「今週のハイライト」は、米国科学振興協会(AAAS)の広報部門が報道関係者向けに作成したニュースを日本語に翻訳したものです。サイエンス誌に掲載された論文・記事とは表現が異なる場合もあり、その正確性、通用性、完全性について、保証をするものでもありません。正確な情報を得るためには、必ず原文をご覧ください。

2009年 2月 13日

本誌は http://www.sciencemag.org/current.dtl をご覧下さい。
電子版は http://www.sciencemag.org/sciencexpress/recent.dtl をご覧下さい。

両親の身ぶり手ぶりで幼児の語彙が豊かに

Gesturing to Toddlers May Improve Their Vocabulary Later

生後14カ月頃の幼児に、指で指し示したり身ぶり手ぶりで働きかけたりすることは、数年後の語彙の発達を促進すると、考えられると研究者らは述べている。この研究結果により、社会経済的地位の低い層に属する子どもが、高い層の子どもよりも語彙が少ない傾向にある理由の一部が、解き明かされた。これまでの研究でこういった傾向は、子どもに対する両親の話しかけ方に関係することが示されていたが、今回、Meredith RoweとSusan Goldin-Meadowは子どもに対する両親の身ぶり手ぶりも子どもの語彙力に影響すると考えられると報告している。RoweとGoldin-Meadowは、さまざまな社会経済的地位にある家族に属する、生後14カ月の幼児とその両親のやりとりをビデオに収めて、その会話や身ぶり手ぶりを記録しておき、後にその幼児が4.5歳になった時点で語彙力を評価した。その結果、4.5歳児の語彙が社会経済的地位の高い層の方で豊かであるという事実が、生後14カ月時の身ぶり手ぶりの使用状況、つまり、元を正せばその時点における両親の身ぶり手ぶりの使用状況から、少なくとも部分的に説明できることが判明した。RoweとGoldin-Meadowによると、身ぶり手ぶりは語彙力の差が現われる前に早い段階で幼児が習得する能力であり、だからこそ、身ぶり手ぶりの増加が幼児期における語彙の習得につながることがさらなる研究によって示されれば、身ぶり手ぶりが両親にとって格好の教育介入の的になると思われる。

"Differences in Early Gesture Explain SES Disparities in Child Vocabulary Size at School Entry," by M.L. Rowe; S. Goldin-Meadow at University of Chicago in Chicago, IL.

風邪ウイルスの謎を解読する

Decoding the Common Cold Virus

今回、風邪の原因ウイルス、ライノウイルスの系統樹が構築された。これによりどのウイルス株をターゲットとすべきかが明らかになり、治療薬の開発に役立つと思われる。風邪はこれまで長年にわたって大きな謎であったが、その主な理由は原因となるウイルスが1種類ではないことにあった。これまで確認されているライノウイルスは99種あるが、他にも数多く存在していると考えられている。風邪の症状には穏やかなものもあれば、耳や肺に二次感染を起こし、さらには喘息まで引き起こしてしまうものもある。過去に何度も薬剤の開発が失敗に終わってきたのは、おそらくそれらの薬剤が、特定のウイルス株に感染した、あるヒトには有効で、その他のヒトには効果がなかったことが最大の理由であろう。様々なウイルス株を分類するため、Stephen Liggettらは今回、既知のライノウイルスと市中(in the field)で新たに検出されたウイルス株のすべてのゲノム塩基配列を解明した。その後Liggettらは各ウイルスの物理的特徴に加えて塩基配列を比較することで、ライノウイルスの系統樹を作成した。この系統樹の中に、既知の主流グループ2つ以外に新しい分岐を発見し、遠い親戚関係にあるウイルス同士が再び結合し新しいウイルス株を生み出すことが可能であることを明らかにした。またこれら発見から、ポリオウイルスと同じように、ライノウイルスの塩基配列にも特に変化しやすい特定の部分が存在し、ウイルス毒性に影響している可能性があることがわかった。これら発見は、薬剤の研究に関心を向けさせるだけでなく、ライノウイルスの進化、多様性および薬剤耐性に関する研究の基盤となるに違いない。

"Sequencing and Analyses of All Known Human Rhinovirus Genomes Reveals Structure and Evolution," by A.C. Palmenberg at University of Wisconsin in Madison, WI; D. Spiro; R. Kuzmickas; S. Wang; A. Djikeng at J. Craig Venter Institute in Rockville, MD; J.A. Rathe; C.M. Fraser-Liggett; S.B. Liggett at University of Maryland School of Medicine in Baltimore, MD.※本論文は2月12日(木)にScience Express」ウェブサイトに掲載。

赤道を超えて鳴き鳥を追跡する

Tracking Songbirds Across Hemispheres

鳴き鳥に小さなバックパック型ジオロケーター(geo-locator)を背負わせて季節毎の渡りを追跡することに今回初めて成功した。その結果、このような小さな鳥が、これまで考えられていたよりもはるかに速く、はるかに遠くまで飛行できることが明らかになった。また今回の研究から、渡りのルートについてもさらに詳細な情報を得ることができた。このデータは、ここ数十年間世界中で減少し続けている鳴き鳥の保護に役立ち、また生息地の喪失や気候変動といった環境問題の評価にも使えるだろう。Brevium記事の中でBridget Stutchburyらは、2007年米国ペンシルベニアの繁殖地で、どのように小型追跡装置をモリツグミ14羽、ムラサキツバメ20羽に取り付けたのか、詳細に説明している。2008年の夏に、Stutchburyらは、ツグミ5羽、ツバメ2羽からジオロケーターを回収し、はるか南アフリカまで移動し再びペンシルベニアに戻ってきたそれぞれの鳴き鳥の渡りルートおよび越冬地を再現した。これにより、これら鳴き鳥が1日に311マイル以上も飛行していること、これまで推測されていたよりもはるかに高い高度を飛ぶことができること、また春の渡りの速度は秋より2〜6倍も速いことが明らかになった。今回の研究で使用された小型ジオロケーターは光を感知するため、日の出日の入りの時間を記録することにより鳥が位置する緯度および経度の算出が可能であった。

"Tracking Long-Distance Songbird Migration by Using Geolocators," by B.J.M. Stutchbury; S.A. Tarof; T. Done; E. Gow; P.M. Kramer at York University in Toronto, ON, Canada; J. Tautin at Purple Martin Conservation Association in Erie, PA; J.W. Fox; V. Afanasyev at Natural Environment Research Council in Cambridge, UK.

他人の不幸は蜜の味

The Pain of Feeling Green

私たちの社会生活が、一般的に考えられているよりも格段に身体的経験に密接に関連していることを示唆する研究において、機能的MRIを用いて脳のどの領域が妬みと他人の不幸を喜ぶ感情に反応するかが確認された。高橋英彦らは、機能的MRIを用いて19名の健常被験者を対象に2つの実験を行った。さまざまな状況における社会的感情である妬みと他人の不幸を喜ぶ感情の神経反応を分析した結果、妬みによって身体的苦痛に関与する領域と同じ前部帯状皮質が刺激され、他人の不幸を喜ぶ感情によって報酬の処理に関与する腹側線条体が刺激されることがわかった。高橋らはまた被験者が、嫉妬を感じる相手が不幸な状況に陥った場合に、腹側線条体の活動が強くなることを確認した。これらの研究結果によって、社会生活で生じる苦痛と喜びの動的関係が初めて解明されたと同時に、ヒトの脳が以前に考えられていた以上に、身体的経験と同様に概念的社会経験を処理する可能性が示唆された。Perspective記事ではMatthew LiebermanとNaomi Eisenbergerが、この研究結果の意味について詳しく議論している。

"When Your Gain Is My Pain and Your Pain Is My Gain: Neural Correlates of Envy and Schadenfreude," by H. Takahashi; T. Suhara at National Institute of Radiological Sciences in Inage-ku, Chiba, Japan; H. Takahashi; M. Matsuura at Tokyo Medical and Dental University in Bunkyo-ku, Tokyo, Japan; H. Takahashi at Japan Science and Technology Agency in Kawaguchi, Saitama, Japan; M. Kato at Keio University School of Medicine in Shinjuku-ku, Tokyo, Japan; D. Mobbs at University of Cambridge in Cambridge, UK; Y. Okubo at Nippon Medical School in Bunkyo-ku, Tokyo, Japan. "Pains and Pleasures of Social Life," by M.D. Lieberman; N.I. Eisenberger at University of California Los Angeles in Los Angeles, CA.

月の裏側の調査

Investigating the Moon’s Far Side

日本の月周回衛星かぐや(SELENE)ミッションの3つの報告により月の表側と裏側の違いが浮き彫りになるとともに、これらの違いを生じる原因がついに解明されるかもしれない。常に地球を向いている側の月面は、なめらかで暗色の火成岩で覆われ、低地を形成している。一方月の裏面は、多くの古いクレーターに穿たれた高地から成る。月がこのように不均等な状態に進化した原因を理解するために、月周回衛星かぐや(SELENE)は多様な機器を用いて月を周回し探査を続けている。 新しい報告3件のうちの1つ目は荒木博志らによるものであり、これまでの地形図よりも高解像度でより広範囲を対象とした月の地形図が発表された。荒木らは、月の地殻が地球に比べて硬いように見えることから、月地殻には水その他の揮発性成分が欠けていると報告している。2つ目の論文では並木則行らが、月の裏側の重力異常について述べており、表側の正の重力異常とは異なり、重力が著しく小さい(クレーター地形の凹みを表している)環の存在を報告している。月の裏側にはまた、重力が著しく大きい小地域があり、それは火山性玄武岩か、盆地の地下深くから隆起した密度の高いマントルから成る可能性がある。総合すると、これらの結果から、誕生初期の月の裏側の地殻は硬く、表側は柔らかいことが示された。3つ目の研究では、小野高幸らが、海の地下数100mに反射面を発見し、その反射面が褶曲しており、褶曲を形成した原因は、従来考えられていたような玄武岩自身の荷重による下方への撓みではなく、月全体の冷却が主たる要因の可能性があると述べている。関連するPerspective記事では、これらの研究結果のすべてと、Science Expressに以前掲載された4つ目の論文について議論している。

"Lunar Global Shape and Polar Topography Derived from Kaguya-LALT Laser Altimetry," by H. Araki; H. Noda at National Astronomical Observatory of Japan in Tokyo, Japan; S. Tazawa; Y. Ishihara; S. Goossens; S. Sasaki; N. Kawano at National Astronomical Observatory of Japan in Oshu, Iwate, Japan; I. Kamiya at Geographical Survey Institute in Tsukuba, Ibaraki, Japan; H. Otake at Japan Aerospace Exploration Agency in Tsukuba, Ibaraki, Japan; J. Oberst at German Aerospace Center in Berlin, Germany; C. Shum at Ohio State University in Columbus, OH. "Farside Gravity Field of the Moon from Four-way Doppler Measurements of SELENE (Kaguya)," by N. Namiki at Kyushu University in Higashi-ku, Fukuoka, Japan; T. Iwata at Institute of Space and Astronautical Science, Japan Aerospace Exploration Agency in Sagamihara, Kanagawa, Japan; K. Matsumoto; H. Hanada; H. Noda; S. Goossens; N. Kawano; K. Asari; S. Tsuruta; Y. Ishihara; Q. Liu; F. Kikuchi; T. Ishikawa; S. Sasaki at National Astronomical Observatory of Japan in Oshu, Iwate, Japan; M. Ogawa at Japan Aerospace Exploration Agency, Tsukuba Space Center in Tsukuba, Ibaraki, Japan; C. Aoshima at Fujitsu Limited in Mihama-ku, Chiba, Japan K. Kurosawa; S. Sugita at University of Tokyo in Kasiwa, Chiba, Japan; T. Takano at Nihon University in Funabashi, Chiba, Japan. "Lunar Radar Sounder Observations of Subsurface Layers Under the Nearside Maria of the Moon," by T. Ono; A. Kumamoto; H. Nakagawa at Tohoku University in Sendai, Japan; Y. Yamaguchi; S. Oshigami at Nagoya University in Nagoya, Japan; A. Yamaji at Kyoto University in Kyoto, Japan; T. Kobayashi at Korea Institute of Geoscience and Mineral Resources in Daejeon, Korea; Y. Kasahara at Kanazawa University in Kanazawa, Japan; H. Oya at Fukui University of Technology in Fukui, Japan. "Seeing the Missing Half," by G.A. Neumann; E. Mazarico at NASA Goddard Space Flight Center in Greenbelt, MD; E. Mazarico at NASA GSFC/Oak Ridge Associated Universities in Greenbelt, MD.
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