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分子の窓から太古の世界を覗く

Molecular windows into primeval worlds

Gretchen Vogel

今年2018年に、科学者らは5億年以上前に生息していた生物の分子痕跡を見つけ出した。この発見は、地球上で最初の動物たちを生み出し始めた謎に満ちた世界のヴェールを剥がし、分子古生物学の射程を数億年前にまで遡らせることとなった。この研究チームは、エディアカラ化石群と呼ばれる謎の生命体の、最も奇妙なものとして知られている化石の一部から脂肪分子の特徴を検出した。海綿動物の化石記録が出現するずっと以前に海綿動物が存在したという、分子学的証拠が発見されたのである。

エディアカラ化石群の不可解な形状は、研究者らの頭を70年間以上にわたって悩ませてきた。その中には、葉や葉状体のようにも見えるものもあれば、地球上にこれまで存在しなかった生物のように見えるものもある。古代の海に生息していたこの生物は植物であったのか、あるいは動物であったのか? それとも、生き残りに失敗した全く別の生命体なのか?

キャンベラのオーストラリア国立大学の研究チームは、5億5千万年前のものでありながら、有機物様の膜が保存されていた例外的な化石から、化学成分を検出できるかもしれないと考えた。これらの化石は、ロシア北西部の北海の海岸沿いの崖から産出したものであり、そうした場所の岩には熱や圧力によって化学成分のような分子痕跡が破壊されずに残っている可能性がある。

研究チームはこのアイデアを確かめるため、エディアカラ化石群の中から小さな球状を呈する化石群であるベルタネリフォルミス(Bertanelliformis)を選んだ。岩から膜を取り出し、溶解させ、ガスクロマトグラフィーと質量分析法によって、保存されている有機分子の検出を試みた。その結果、高レベルのホパン、すなわちこの球体化石がシアノバクテリアのコロニーであったことを示唆する分子が検出され、1月にこの結果が報告された。この成功に意を強くした研究チームは、エディアカラ化石群のなかでも最も有名な種の1つであるディッキンソニア(Dickinsonia)にもこの手法を適用してみた。この化石は全長約50cmの卵円型で、織物のようにも見える。研究チームは9月、このディッキンソニア化石に、コレステロール様の分子の痕跡、すなわち動物であることを示す特徴が認められたと発表した。このことは、少なくとも一部のエディアカラ生物群が地球上で最古の動物であること示す他のエビデンスとも一致する。

同じ2018年の10月、別の研究チームが6億6,000万年前~6億3,500万年前の岩層から、現在は海綿動物によってのみ産生される分子の痕跡を検出した。この発見は、海綿の化石として認定されている最古のものよりさらに1億年も前に、動物体の1つである海綿動物が進化していた可能性を示唆している。

原文(英語版)はこちらから