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分子構造の解明を簡単に

Molecular structures made simple

Robert F. Service

2つの研究チームが2018年10月に同時に発表した論文において、小さな有機化合物の分子構造を、従来の方法では数日、数週間、または数ヵ月を要していたのを、わずか数分で決定できる新しい方法が明らかにされた。

何十年間にもわたって、分子マッピングのためのゴールドスタンダードはX線結晶構造解析として知られてきた技術である。このX線結晶構造解析では、共通の配向で整列した何百万もの分子のコピーを含む結晶に向けてX線ビームを照射する。そして研究者は、X線が結晶からどのように反射されるかを追跡して個々の原子を同定し、分子内におけるそれらの原子の位置を決定していく。こうして決められた構造は、生体分子がどのように振る舞うのか、そして薬物が生体分子とどのように相互作用するのかを理解する上で極めて重要である。しかし、この解析法では砂粒程度の大きさにまで結晶を成長させる必要があり、これは解析対象とする物質によっては大きな障害となる場合がある。

近年、研究者らはX線の代わりに電子ビームを用いることによって、この回折技術に修正を加えた。電子ビームは、標的とする生体分子(通常はタンパク質)のシート状の2次元結晶に向けて照射される。しかし、場合によってはそれらのシートが積み重なってしまうことがあり、その結果として通常の電子線回折が役に立たない、あるいはX線回折には小さすぎる3次元結晶が生じることがある。

2つの研究チーム(米国の研究チームと、ドイツおよびスイスの研究チーム)は、実はそのように偶然生じた結晶を使用できることを明らかにした。研究者らは、回転台の上に置いた小さな3次元結晶に電子ビームを照射し、少しずつ回転するにつれて回折パターンがどのように変化するかを追跡した。この技術により、わずか数分間で、しかもX線を用いた場合に必要とされる大きさのわずか10億分の1の微視的結晶から、分子構造を生成することができた。

この新たな手法は、ホルモンや薬物候補物質などの小分子のマッピングに非常に適しているため、新しい医薬品の合成および発見から、疾患の研究および追跡を目的とした分子プローブの設計に至るまで、幅広い分野に大きな影響を与えるであろう。

原文(英語版)はこちらから