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古人類のハイブリッド

An archaic human ‘hybrid’

Gretchen Vogel

5万年以上前に生きていた1人の女性の骨片から、絶滅した2つの古人類集団間の驚くべき関係が明らかになった。2012年にシベリアの洞窟で発見されたその骨片からDNAが抽出され、女性の母はネアンデルタール人、父はデニソワ人であることがわかった。デニソワ人は謎の多い古人類集団で、同じ洞窟から2011年にデニソワ人骨も発見されている。

ネアンデルタール人、デニソワ人、そして現生人類は、氷河時代のヨーロッパやアジアにおいて時折ではあるが交雑していたことはすでに知られている。現代のアジア人やヨーロッパ人も、ネアンデルタール人とデニソワ人の遺伝子を保有している。シベリアの洞窟で発見された他の古人骨によって、この3つの集団は異なる時代にその場所で暮らしていたこともわかっている。しかし、このたびの新発見は、1人のデニソワ人男性と1人のネアンデルタール人女性の出会いを示す直接的な証拠である。

ドイツのライプツィヒにあるマックス・プランク進化人類学研究所の研究チームがこの骨片のDNAシーケンシングを行ったところ、それが女性のものであること、そしてネアンデルタール人とデニソワ人のゲノムがほぼ同量含まれていたことが明らかになった。その理由としては、女性の両親も両集団の異種交雑であった可能性が考えられた。しかし、女性の染色体対には遺伝子のほぼ半分に異なる変異型、つまりヘテロ接合対立遺伝子が存在していた。これは母方と父方の染色体が異なる人類集団に由来していることを示している。女性のミトコンドリアDNAのほとんどは母から受け継がれたもので、純粋なネアンデルタール人のものであった。そこで、研究チームは、女性はデニソワ人の父とネアンデルタール人の母から生まれた混血の第一世代であると結論付けた。ゲノムをさらに調べてみると、女性の父にもネアンデルタール人の血がいくらか混じっていたことも明らかになった。

女性が保有していたネアンデルタール人の遺伝子については次のようなこともわかった。それは、女性より前にデニソワ洞窟に居住していたネアンデルタール人集団の遺伝子よりも、クロアチアで発見された1人のネアンデルタール人の遺伝子に近かったのである。著者らによれば、このことは、異なるネアンデルタール人集団が西ヨーロッパとシベリアを繰り返し行き来ししていた可能性を示唆している。移動の途上で、明らかに彼らは自由に他集団へと彼らの遺伝子を拡散させていた。なぜ、デニソワ人とネアンデルタール人は遺伝的な違いを残したままであったのだろうか? 地理的な障壁が関係していたことは十分に考えられる。しかし、研究者らは、先史時代の両集団の交雑が実際にどのような影響を及ぼしていたのかを解明するには、別の遺跡群からさらなるDNAを得ることが必要であると考えている。

原文(英語版)はこちらから