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細胞はその内容物をどう整理しているか

How cells marshal their contents

Ken Garber

細胞の内部という舞台に立っている数多くの役者たちは、どのようにして正確な場所と適切なタイミングで集まり、それぞれの重要な役割を果たしているのだろうか? 生物学者らは徐々に気付き始めているが、その最たる答えは液滴である。最近まで知られていなかったが、液滴は細胞内のいたるところに姿を現し、居並ぶ役者たちの仕事をまとめあげているのである(時には台無しにしてしまうこともある)。

数万ものタンパク質やその他の生体分子が細胞質内に存在している。この濃密な液体が細胞の核を取り囲み、しばしばぶつかり合い反応することで、栄養素の分解によるエネルギー生成から老廃物のリサイクルに至るまでの生命現象を担っている。2009年初頭、研究者らは、とりわけ細胞のストレス応答時において、多くのタンパク質が分離もしくは凝縮して離散した液滴となり、そこでは内容物の濃度が高くなっていることを発見した。この「液-液相分離」という現象は、ちょうどサラダドレッシングのビネグレットソースでは油と酢が混ざらずに「分離」しているのとそっくりである。液-液相分離は今や、細胞生物学における最もホットな話題のひとつとなっている。それは、この現象が重要な生化学反応を促進するものであり、さらに細胞の基本的な組織化原理となっていることを示すエビデンスが積み重ねられつつあることからもわかる。

2017年にNatureに掲載された2報の論文は、核内に存在するタンパク質の液滴がゲノムの圧縮された領域を作り出し、その部位において遺伝子発現の抑制が起きていることを報告している。本年Scienceに掲載された3報の論文では、相分離にはさらに大きな役割があることが指摘されている。これらの論文の著者らは、タンパク質の新規合成の第一段階でもあるDNAからRNAへの遺伝情報の転写を制御するタンパク質が凝縮して液滴となり、DNAに結合していることを明らかにしている。この現象の詳細についてはまだ明らかにされていないが、これらの研究は遺伝子の選択的発現という生命の根本的な謎のひとつにおいて、相分離がもつ役割を明らかにしたのである。

生物物理学者らは、これらの液滴がどのようにして形成されるかを解明することに取り組んでいる。ある種のタンパク質はスパゲッティのようなしっぽを引きずっており、これらが相互作用を起こして凝縮を誘発している。しかしこの過程がうまくいかないと、液体とならずにゲルになってしまう。ゲルは時として凝固し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった神経変性疾患で認められるような凝集体を形成してしまう。3月のScienceに掲載された論文では、このような現象が起こるのはそうしたタンパク質が細胞の核から不適切に排出された場合であることを報告している。4月にCellに掲載された4報の論文では、この有害な凝集体を分解する有望な手段が明らかにされ、さらに現在では複数の研究室がこの知見を利用して神経変性疾患の治療薬の開発に取り組んでいる。

原文(英語版)はこちらから