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トランプ大統領と科学者:壮絶な不和

Trump and scientists: an epic estrangement

Jeffrey Mervis 

ドナルド・トランプ大統領の就任1年目も終わりに近づいたが、この共和党の異端者と米国科学界との関係はまったくうまくいっていない。関係は大きく破綻しており、これといった解決策も見当たらない。

不和の理由のひとつに、科学関連の問題に対するトランプ大統領の対応がある。彼は2015年に採択されたパリ協定を脱退し、多くの環境規制を後退させ、重要な研究機関の大幅な予算削減を要求した。さらに、多くの科学者は、大統領が決めた(および決めなかった)研究関連の人事に危機感を募らせている。本記事の出版時では、ホワイトハウス科学顧問がまだ不在であり、トランプ大統領は数名を選んで連邦の研究計画を監視させているが、その者たちは科学的資質が著しく欠如している。

こうした事態によって、「大統領と上級顧問らは科学に関心がなく、国民の健康・繁栄・安全の改善に科学が貢献していることを評価していない」という印象が強まった。これが事実ならば、科学界が両政党の代々の政策立案者から支援を受けてきたのとは、まったく逆の状況といえる。

多くの科学者が大統領個人に嫌悪感を抱いていることに加えて、大統領が科学を明らかに軽視しているせいで、多くの科学分野のリーダーがこの政権への関与を望まなくなったようだ。著名な米国の科学者66人に対してScienceが非公式に調査したところ、半数がトランプ大統領のもとで働く誘いを受けても断ると回答した。これまで科学界は公共事業に積極的に関わってきたことを考えると、この割合は驚くほど高いといえる。その一方で、5人に4人が学識経験者による科学諮問委員会に招かれれば検討するだろうと回答した(回答者の半数が民主党支持者、40%が無党派、10%が共和党支持者)。

調査対象となった科学者の多くが、科学問題に関して政府にできる限りの助言をしたいという願望と、尽力しても無駄になるだろうという危惧との狭間で葛藤していると報告している。「トランプ政権とどう付き合えばよいのか苦慮しています」と、分子生物学者でありプリンストン大学の名誉学長でもあるShirley Tilghmanは認める。「これまでの共和党政権のときは、政策に違いがあっても支障はありませんでした。というのも、政権が基本的に誠実であり科学研究に取り組んでくれると信じていたからです」と、民主党支持者であるTilghmanは話す。「トランプ政権を同じように信用することはできません」

「科学者が(ホワイトハウスと)協力して、大統領が科学予算の優先順位を決める際に助言することが重要です」と話すArden Bementは、ジョージ・W・ブッシュ元大統領のもとで、メリーランド州ゲイザースバーグにある国立標準技術研究所と、バージニア州アレクサンドリアにある国立科学財団(NSF)の所長を務めた共和党支持者である。「残念ながら、科学関連の助言をしても、大統領が反対したり、内容を理解できなかったり、個人的・政治的理由で曲解したりするならば、虚しく歯がゆい思いをすることになります」

年間1500億ドルにのぼる政府の科学投資が煩雑であることを考えれば、どの大統領の場合も研究政策をひとくくりに論じるのは難しい。一方では、トランプ大統領が国立衛生研究所(NIH)の所長Francis CollinsとNSFの長官France Córdovaの留任を決めたことで、現政権中も学術研究はあまり痛手を受けずにすむのではないかと期待している科学者も多い。また一方では、トランプ大統領が指名した人物(食品医薬品局長官にScott Gottlieb、疾病管理予防センター長官にBrenda Fitzgerald、公衆衛生局長官にJerome Adams)は、各機関の仕事を理解し支えることのできる主流派の人物だと広く見なされている。

しかし、トランプ大統領の選択のなかには科学者が非難しているものもある。環境保護庁とエネルギー省(DOE)の各長官であるScott PruittとRick Perryは、その機関が担う科学的使命に懐疑的な人物だと広く見なされている。また、トランプ大統領がNASAの長官にJames Bridenstine(共和党・オクラホマ州)を指名したことは、この宇宙機関の政治利用に向けた一歩ではないかと考えている者も多い。研究者らがとくに唖然としたのは、農務省の研究部門の監視役にSam Clovisが指名されたことである(科学的資質がまったくない政治のプロであるClovisは、2016年大統領選のロシア介入に関する捜査に絡んで、指名を辞退した)。

トランプ大統領は多くの役職の任命に時間をかけてきたことからみても、科学を特別に無視しているわけではないだろう。しかし周知のように、ホワイトハウス科学技術政策局の局長がまだ任命されていない。従来ならこの役職は、特に困難な状況において、大統領の科学顧問も兼ねていたものである。とはいえ、資質のない者が任命されることはだれも望んでいない。また、大統領が科学顧問と不要だと考えれば、この役職は意義を失うかもしれない、と懸念している人もいる。

もちろん、いかなる大統領もワシントンD.C.のすべてを支配することはできない。トランプ大統領はNSFやNIHといった科学機関に対する2018年度予算を大幅に削減するよう要求したが、連邦議会はその大部分を却下した。この対応が行動喚起になるはずだ、と話すCherry Murrayはハーバード大学の物理学者であり、バラク・オバマ前政権でDOEの科学局を率いた人物である。「米国の科学界は、下院・上院両方の授権委員会および歳出委員会と相互関係を築き、行政機関以外にも目を向けることが非常に重要です」

増加する抗議運動がホワイトハウスとの壊れた関係を修復する鍵であるという考えもあるが、科学者らの間では、今春に行われた異例のデモ「March for Science(科学のための行進)」の影響について、いまだに議論が続いている。国民の支持を集めるのに効果があったという声がある一方で、不和が悪化したという意見もある。

先月、ワシントンD.C.にある国立科学工学医学アカデミーで、政府と学界との協力関係について非公開会議が行われ、嘆かわしい現状があらわになった。2008年に行われた同様の会議でブッシュ大統領の閣僚3人が話をした際には、聴衆の多くが大統領の政策を受け入れがたく感じたにもかかわらず、参加した科学者は拍手を送った。しかし今回、トランプ政権の代表者は、数名が招待されていながら、終日行われたその会議に誰一人として参加しなかった。そして、現政権の研究政策を支持する言葉は、ただの一言も聞かれなかった。