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遺伝子治療の快挙

Gene therapy triumph

 Jocelyn Kaiser

 今年、小さな臨床試験の劇的な成功が、遺伝子治療の分野を活気づけた。

 研究者らは、致死的な遺伝性神経筋疾患をもって生まれた複数の赤ちゃんの生命が、失われた遺伝子を脊髄ニューロンに導入することにより救われたと報告した。もし治療しないままにしておくと、これらの赤ちゃんは2歳までに死亡していたであろう。この試験はまた、より大きな意義を持つマイルストーンでもある。なぜなら、研究者らは新しい遺伝子を、脳と脊髄を血液媒介病原体および毒素から保護する血液脳関門を越えて送達したからである。この業績は、他の神経変性疾患を治療するために遺伝子治療を用いることへの扉を開き得るものである。

 この成功のカギとなったのは、遺伝子治療において標的細胞まで遺伝子を運ぶために広く用いられている、アデノ関連ウイルス(AAV)と呼ばれる無害なウイルスであった。2009年に、フランスとNationwide Children’s Hospital in Columbus(オハイオ州)のグループが、マウス新生仔に対して経静脈的に投与されたAAV9と呼ばれるタイプのAAVが、脳と脊髄に浸透できることを発見した。

 今回、全米規模の研究者らが、経静脈的AAV9を用いた遺伝子治療により、乳児における死亡の最も多い遺伝的原因である脊髄性筋萎縮症1型(SMA1)を阻止できることを示した。SMA1を保有する新生児は、脊髄の運動ニューロンに必要とされる蛋白質を欠失しており、これらの赤ちゃんは筋力が弱く、最終的に呼吸ができなくなる。今年の11月に、全米のチームとAveXis社は、欠失した蛋白質をコードする蛋白質を搭載した高用量のAAV9の投与を受けた12人の赤ちゃんが、1人を除いて、話し、食事をし、短い時間ではあるが自分で座ることができるようになったと報告した。1人の少女は速く歩けるようになり、1人の少年は走れるようになった。新規薬剤により同様の結果が達成されているが、これは数ヵ月ごとに脊髄に注射する必要がある。

 現在研究者らは、他の遺伝子を搭載したAAV9の注入を用いて、重度の遺伝性脳疾患を有する子供の治療を試みている。これまで、こうした子供に遺伝子治療を施すためには頭蓋骨に孔を開けなければならなかったが、あまり効果はなかった。

 SMA1による結果は、今年他の遺伝子治療で得られた進歩に続くものである。患者の免疫細胞に体外で遺伝子改変を行い、次いで再注入するという2つのがん治療は、米国で上市される最初の遺伝子治療となった。そして12月19日に、米国食品医薬品局(FDA)は、失明をもたらす稀な遺伝性疾患に対する初の遺伝子治療を承認した。