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原子レベルの生命

Life at the atomic level

Elizabeth Pennisi

これは、Scienceの最高賞に輝くと同時に、その影響が増大し続けている稀に見る革新である。しかし、今年はクライオ電子顕微鏡(クライオEM)の当たり年で、これにより複雑な分子が互いに作用しているところを静止画像で捉えることが可能になった。今年、クライオEMは主要な蛋白質複合体の機能について多くの洞察を提供し、アメリカ国立衛生研究所(NIH)は全国にクライオEMセンターのネットワーク網を設置し、またこの技術の開発者の一部がノーベル化学賞を受賞した。

クライオEMは水中で活動中の分子を、液体エタンを用いて急速冷凍する。研究者はこれを電子顕微鏡下で観察し、コンピュータプログラムを用いて画像をソートし、データから一貫した構造イメージを組み立てる。構造生物学のゴールドスタンダードであるX線結晶構造解析とは異なり、クライオEMでは対象とする分子を結晶化(多くの場合、困難な課題)する必要はなく、また分子が活動中のところを捕捉するため、機能のカギを明らかにしてくれる。この技術の源は数十年前にさかのぼるが、器具レベルの向上、画像の処理および解析を迅速化するソフトウェア、そしてエラーを減らす取り組みにおける良質の新たな標準法によって、爆発的な進歩の引き金を引く助けとなった。

これまで可視化されなかった構造について近原子分解能を提供することで、クライオEMは、生化学および遺伝学における何十年にもわたる観察結果を説明する助けとなっている。今年、この技術によって、RNA処理におけるカギとなる機構であるスプライソソームがいかに機能に関する新たな洞察、細胞の生活環において膜のリモデリングを行う蛋白質に関するより明確な見解、そしてDNAの損傷を修復する酵素についての洞察が得られることとなった。この技術はまた、アルツハイマー病患者の脳内に蓄積している神経原線維変化やプラーク形成性線維の高解像度モデルを提供し、遺伝子編集を行う複雑なCRISPRがどのようにDNAを捕捉し操作するのかを示してくれた。さらに研究者らは、紅藻の巨大な集光性蛋白質複合体やこれまで研究の圏外にあったいくつかの小さな蛋白質複合体の構造を明らかにすることで、大分子や小分子を解明するクライオEMの能力を押し上げたのである。