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リンパ管:巧妙に隠されていた脳の秘密

Lymphatic vessels: The brain's well-hidden secret

人体のシステムをすみずみまで調べ上げたと思っていた解剖学者にとって、今夏の発見は、眼前に新大陸が現れたようなものだった。これまで大半の科学者は、リンパ系(体内の老廃物の排除と免疫細胞の輸送を助ける脈管網)は頸部で行き止まりになっていると考えていたが、予期せぬ発見から、リンパ系が脳内にまで広がっていることが明らかになった。

2世紀以上前、イタリアの医師パオロ・マスカーニは、脳にも体の他の部分と同じようにリンパ管が配されていると提唱した。彼の主張はほぼ無視されたが、今年、マウス脳内における免疫細胞の役割を探っていた研究者らは、やけに組織化された一揃いのT細胞を脳の外層に見出した。近傍にある脈管がT細胞を導いているらしく、バイオマーカーは、その謎の脈管がマウスのリンパ系から伸びていることを示した。それ以降、組織学的エビデンスによって、ヒト脳にも同様の脈管が潜んでいることが示唆されている。

最外層で脳を覆う髄膜の中にしまい込まれ、巧妙に隠されていたこの脈管は、免疫系と脳の相互作用のあり方について、洞察を与えてくれる可能性がある。科学者らは、脳には脳独自の自己完結型免疫防御があり、体の他の部分とは切り離されていると考えていた。この物理的なつながりの発見――もしくは再発見――によって、アルツハイマー病、多発性硬化症、髄膜炎などの神経変性疾患および神経炎症性疾患の探索に新たな道が開ける可能性がある。しかし、研究者らは言う。当面は、新たに発見されたネットワークの基本構造と機能を探るのが先決であると。


組織サンプル内に発見されたリンパ管。体内に張りめぐらされた免疫系が脳にも侵入していることが明らかになり、生物学者を驚かせた。

元の記事を見る(英語):http://www.sciencemag.org/content/350/6267/1458