サイエンス日本語版

日本語アブストラクト
31 October 2008 Volume322 Number5902

Research Articles

染色体の異数性は哺乳類細胞の増殖と自然発生的な不死化に影響する Aneuploidy Affects Proliferation and Spontaneous Immortalization in Mammalian Cells Bret R. Williams, Vineet R. Prabhu, Karen E. Hunter, Christina M. Glazier, Charles A. Whittaker, David E. Housman, and Angelika Amon 異数性とは染色体数の異常のことで、ヒトにおいては流産や精神発達遅滞の主因であり、また癌細胞のもつ特徴でもある。今回われわれは、マウスの染色体4対について、それぞれが1本余分な染色体を持つ一連の細胞株(トリソミー細胞株)を作製し、マウス初代細胞における異数性の影響を調べた。その結果、4種類全てのトリソミー細胞株において増殖能が低下しており、代謝特性は変化していた。染色体が余分にあることで、細胞の不死化、すなわち無限の増殖能の獲得に影響が認められた。われわれの結果は、異数性は生物としての適応性のみならず細胞の適応性も減少させ、異数性細胞間で共通してみられる特徴を誘導することを示唆している。 →英文アブストラクト

核酸塩基-陽イオン-共輸送-1ファミリー輸送体の構造と分子メカニズム Structure and Molecular Mechanism of a Nucleobase–Cation–Symport-1 Family Transporter Simone Weyand, Tatsuro Shimamura, Shunsuke Yajima, Shun'ichi Suzuki, Osman Mirza, Kuakarun Krusong, Elisabeth P. Carpenter, Nicholas G. Rutherford, Jonathan M. Hadden, John O'Reilly, Pikyee Ma, Massoud Saidijam, Simon G. Patching, Ryan J. Hope, Halina T. Norbertczak, Peter C. J. Roach, So Iwata, Peter J. F. Henderson, and Alexander D. Cameron 核酸塩基-陽イオン共輸送体(NCS1)ファミリーの輸送体は、核酸および関連代謝物のサルベージ経路に必須のコンポーネントである。今回われわれは、ミクロバクテリウム(Microbacterium liquefaciens)の NCS1に属するベンジルヒダントイン輸送体であるMhp1について、分解能2.85Åにおける構造を報告する。Mhp1は12本の膜貫通ヘリックスを有し、うち10本は、5本のヘリックスよりなる繰り返し配列が、それぞれ細胞膜の反対側を向いた形で配置されている。Mph1の外向きに開いたコンフォメーションと、基質との結合により閉じたコンフォメーションの構造が明らかになり、外向きキャビティー(空洞)が基質との結合時に閉じる仕組みがわかった。さらにロイシン輸送体およびガラクトース輸送体と比較したところ、外向きキャビティー、内向きキャビティーが膜の反対側に対称的に配置されていることが明らかになった。これらのキャビティーの相補的な開閉は、対向する繰り返し配列のヘリックス3と8により同期されており、これが膜輸送のアルタネイティングアクセスモデルの構造的原理となっていることがわかった。 →英文アブストラクト

Reports

大加速度地震動時におけるトランポリン効果 Trampoline Effect in Extreme Ground Motion Shin Aoi, Takashi Kunugi, and Hiroyuki Fujiwara 地震危険度評価の研究においては、通常、水平動に注意が注がれる。しかし、2008年6月14日に日本で起きた岩手・宮城地震(モーメントマグニチュード6.9の地殻内地震)の際に記録された上下動加速度波形(水平動成分の2倍以上)では、重力加速度のほぼ4倍という、先例をみない大きな加速度が明らかになった。この上下動加速度波形は明らかな非対称を示しており、上向き方向の波形包絡線は、下向き方向の約1.6倍であった。この非対称性は、既存の地盤応答モデルによっては説明できない。そこでわれわれは、トランポリンの上で、弾性体が弾むという単純なモデルを提示して、この上下動成分にみられる非対称性と大きな振幅を説明する。これまで知られていなかった地面の振る舞いの発見は、震源極近傍強震動の評価に大きな進歩を促すと考えられる。 →英文アブストラクト

Trpm7の欠失により胚発生と胸腺発生が破壊されるが、Mg2+のホメオスタシス(恒常性)は変化しない 注)Trpm7transient receptor potential-melastatin-like 7 Deletion of Trpm7 Disrupts Embryonic Development and Thymopoiesis Without Altering Mg2+ Homeostasis Jie Jin, Bimal N. Desai, Betsy Navarro, Adriana Donovan, Nancy C. Andrews, and David E. Clapham Transient receptor potential-melastatin-like 7Trpm7)遺伝子は、イオンチャネルやキナーゼとして機能する蛋白質をコードする。TRPM7蛋白質は、脊椎動物の細胞内Mg2+ホメオスタシスに必要であると提唱されている。今回、マウスTrpm7を欠失させることにより、Trpm7が胚発生に必須であることが明らかとなった。T細胞系列におけるTrpm7の組織特異的欠失により、胸腺発生が障害された。そのため、CD4抗原もCD8抗原もないダブルネガティブの時期に胸腺細胞の発生が阻害され、さらに、胸腺髄質細胞の進行的減少をきたした。しかし、T細胞におけるTrpm7の欠失は、Mg2+の急激な取り込みや、細胞内の全Mg2+量の維持には影響しなかった。Trpm7欠損胸腺細胞では、胸腺髄質上皮細胞の分化・維持に必要な多くの増殖因子の合成が調節されず、その結果、分化した胸腺髄質細胞は、signal transducer and activator of transcription 3 (STAT3)活性を失った。この結果から、胸腺細胞のTrpm7が障害を受けると、胸腺髄質細胞が欠失すると説明できる。 →英文アブストラクト

Copyright © 2008 by the American Association for the Advancement of Science.