サイエンス日本語版

日本語アブストラクト
27 April 2007 Volume316 Number5824

Reports

NOV(CCN3)はヒトの造血幹細胞および前駆細胞の制御因子として機能する 注)NOV: Nephroblastoma Overexpressed NOV (CCN3) Functions as a Regulator of Human Hematopoietic Stem or Progenitor Cells Rajeev Gupta, Dengli Hong, Francisco Iborra, Samantha Sarno, and Tariq Enver 造血細胞移植の臨床応用における成功は、造血幹細胞と前駆細胞に依存している。今回われわれは、マトリクス細胞(matricellular)蛋白質であるNephroblast Overexpressed(NOV, CCN3)が、同細胞の機能的完全性に不可欠であることを確認した。NOVの発現は臍帯静脈血の未熟なCD34分画に限局しており、レンチウイルスをベクターとするRNA干渉法によってマトリクス細胞のNOVをノックダウンすると、in vivo、in vitro両方でその機能が抑制された。逆に、NOVの強制的発現、または組換えNOV蛋白質の添加によって、原始幹細胞や前駆細胞の活性が増強された。これらの結果を総合すると、NOV(CCN3)は、ヒト造血幹細胞および前駆細胞の制御因子であることが明らかになった。 →英文アブストラクト

網羅的ハイスループット解析によって大腸菌(Escherichia coli)の遺伝的・環境的変動応答を観測する Multiple High-Throughput Analyses Monitor the Response of E. coli to Perturbations Nobuyoshi Ishii, Kenji Nakahigashi, Tomoya Baba, Martin Robert, Tomoyoshi Soga, Akio Kanai, Takashi Hirasawa, Miki Naba, Kenta Hirai, Aminul Hoque, Pei Yee Ho, Yuji Kakazu, Kaori Sugawara, Saori Igarashi, Satoshi Harada, Takeshi Masuda, Naoyuki Sugiyama, Takashi Togashi, Miki Hasegawa, Yuki Takai, Katsuyuki Yugi, Kazuharu Arakawa, Nayuta Iwata, Yoshihiro Toya, Yoichi Nakayama, Takaaki Nishioka, Kazuyuki Shimizu, Hirotada Mori, and Masaru Tomita 細胞のさまざまな階層にわたる成分を同時に解析することにより、細胞機能についての有益な洞察が得られる。今回われわれは、遺伝的変動や環境的変動に対する大腸菌(E. coli)の応答を明らかにするため、網羅的ハイスループット測定をおこなった。E. coliの代謝酵素遺伝子変異株を用いて解析をおこなったところ、意外なことに多くの変異体において、メッセンジャーRNAや蛋白質の変動は小さいことが明らかになった。概して代謝産物の量も一定しており、これは代謝ネットワークにおける代謝流束の経路変化(rerouting)を反映していると考えられる。一方でE. coliは増殖速度の変化に対しては応答し、積極的に酵素発現量を制御することで、安定した代謝状態を維持していた。したがってE. coliは、複数の戦略を使い分けることにより、変動に対して強い代謝ネットワークを実現しているように思われる。 →英文アブストラクト

合成した母性効果利己的遺伝因子を用いて、ショウジョウバエ(Drosophila)の集団置換を促進する A Synthetic Maternal-Effect Selfish Genetic Element Drives Population Replacement in Drosophila Chun-Hong Chen, Haixia Huang, Catherine M. Ward, Jessica T. Su, Lorian V. Schaeffer, Ming Guo, and Bruce A. Hay 昆虫が媒介する病原体の伝播を制御するために、さまざまな戦略が提唱されている。そのひとつは、野生集団全体に、疾患抵抗性導入遺伝子を迅速かつ確実に拡散させるための促進機構を用いている。今回われわれは、ショウジョウバエ(Drosophila)の個体群置換を促進し、組換えによる分離に抵抗性をもつ母性効果利己的遺伝因子を作成したところ、疾患抵抗性が機能したので報告する。これらの利己的因子には、母系的に発現され胚形成に必須な遺伝子をマイクロRNAによってサイレンシングさせる機能があり、その結果、救済導入遺伝子の接合子での早期発現につながっている。 →英文アブストラクト

ヒト急性白血病の発生と進展をマウスで再現する(モデルマウスの作成) Modeling the Initiation and Progression of Human Acute Leukemia in Mice Frédéric Barabé, James A. Kennedy, Kristin J. Hope, and John E. Dick 白血病の発症と進展に関するわれわれの理解は、初代ヒト造血細胞から白血病が発生するin vivoのモデルがないことによって阻まれてきた。今回われわれは、免疫不全マウスへの移植により、混合系統白血病(mixed-lineage leukemia : MLL)融合遺伝子を発現する原始ヒト造血細胞から、ヒトの疾患の特徴を備えた骨髄性もしくはリンパ性の急性白血病が発生することを示した。逐次移植をおこなったマウスを分析することで、この疾患は、白血病を引き起こす細胞(leukemia-initiating cells : L-ICs)によって維持されていることが明らかになった。このL-ICsは、時間経過とともに、生殖細胞系列の免疫グロブリン重鎖(immunoglobulin heavy chain : IgH)遺伝子の構造を持つ原始細胞タイプから、再構成されたIgH遺伝子を持つ細胞タイプへ、変化していった。L-ICsは、骨髄系統とリンパ系統への分化可能性を保持し、微小環境信号への応答を示し続けた。これらの細胞の特性が、MLL白血病のさまざまな臨床的特徴の生物学的基礎となる。 →英文アブストラクト

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